森の窓

森の窓

vol.29

2018年05月07日

小説を中心に文庫本で読めるものを1年間ほど紹介してきましたが、もう少し分野を広げて見ることにしました。

 

小説と同じに、人が考えることに於いては違いは無いかもしれません。その時に、私にとって第1に紹介したいのは、吉本隆明さん

 

の、「共同幻想論」です。初読では、このオジさん何を言っているのだろうと思うかも知れませんが、(私はそう思いました)1970

 

には、この列島ではどうしても必要な作品でした。私たちが私たち自らの力で考えること、その一歩としての作品です。当時は、否

 

的な評価をする人は沢山いましたが、結果は始めの一歩の力作だと思います。何しろ列島人は、吉本さんも含め、文化人類学者のレ

 

ィーストロースや哲学者フーコーなどの成果をほとんど知らない時代の作品です。疑問を自分の力で解く努力をしなければならない

 

でした。とりわけ、人間の幻想(上部構造)を、自己幻想、対幻想、共同幻想と、それぞれを分けて考えることを、私に教えてくれ

 

のはこの本です。もっともこの本のせいで、小説を読む幅が狭まってしまいました。私が私の幻想にそれ程頼れないなと気づいてし

 

ったからです。

 

(小形烈/記)

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